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窓の桟に腰を預け、さきほど自ら傷つけた掌の傷をぺろりと舐める。
「さて、と」
欲をかいたΩに、身の程を教えた上で、自分が何に手を出そうとしたのか思い知らせ、罪を贖ってもらわなければ。
愚か者には愚か者に相応しい末路を用意する。
「……俺の番は人気者で世話が焼けるな」
しかし、番のために一肌脱ぐのはちっとも苦ではない。
むしろ喜びである。
(残念だったな、園原)
薫の唇に艶美な微笑が浮かぶ。
「『運命』はとっくの昔に決まってる」
他でもない、――この俺がそう決めたのだから。
「誰にも邪魔はさせねぇ」
それが、たとえ番本人だとしても――。
「もうすぐだ。……もうすぐ、おまえを手に入れるよ」
薫は甘い飴玉を舌で転がすように口の中で愛しい番の名を呼んだ。いずれその舌で、番の肌を味わう日を夢見て――……。
END
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