偽りのΩ

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偽りのΩ

 人間は、男女という性別の他に、三種類のタイプにわけられる。  すべてにおいて優れ、指導者たるカリスマ性をもつα(アルファ)。  一般大衆としてくくられるβ(ベータ)。  そして、――希少種であり、唯一αの(つがい)となる「性」を持つΩ(オメガ)である。 「…………Ω、ですか…」  中二の夏休み。  俺は、自分がΩであると医者に宣告を受けた。  診断結果を聞くために付き添ってきた母親が、診察椅子に座った俺の隣でひどく戸惑った声を漏らす。  だが、俺に母親を気遣う心の余裕などなかった。  ただただ、信じられなくて、現実を受け止めきれなくて呆然としていた。  なぜなら、その時まで、俺は自分がαであると欠片も疑うことなく信じ切っていたからだ。  診察室にまで聞こえてきたジィジィと騒々しい蝉の声が、からからに干上がった喉の記憶と共にやけに鮮明に耳に残り、長く俺を苦しめることになる。  俺の家族は、Ωの母親を除き、全員がαだった。  典型的なエリート一家として、業界ではそれなりにそれぞれが名を馳せている。  兄弟は、上に兄が三人と姉が一人の合わせて四人。  俺は末っ子だった。     
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