プロローグ「神様との邂逅」

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 私は、この街で一番高いと言われるビルの屋上にいる。  仕事の為に、散々、人を騙し、欺き、数々の命を死へと追いやって来た。  しかし、最後の最後に、自分自身の命を絶つ日が来るとは……クック、皮肉なもんです。  心の中で自嘲しながら、私は空を見上げた。  いい天気です。雲一つない青空。  死ぬには申し分無い日だな……。  屋上を取り囲む黒鉄色の鉄柵。  私は、鉄柵に近づくと、ガシャガシャと音を立てながら柵をよじ登り、鉄柵の上へと跨がった。  強風に靡く髪を抑えつけ、ふと、辺りの景色を見回す。それにしても、いい眺めだ。  目下で広がる大小様々なビル群と、その隙間を埋めるよう造られた道路(ミチ)は、正に人間が創りし芸術。 「冥土の土産に良い物がみれました……もし、私みたいな屑でも、生まれ変わる事ができるのなら、次こそは何のしがらみもない、自由な暮らしがしたいなぁ……」  そう呟くと同時に、私は鉄柵から身を乗り出して屋上から飛び降りた。  ビル風によって一瞬、身体が浮く。  そして、地面に吸い込まれるようにカラダが落下し始めた。  ゆっくりと目を瞑ると、頭の中を今までの出来事が走馬燈のように駆け巡る事は無かった……。  私はカッと目を見開き!     
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