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何、勝手、言ってるんです。キミとは、初対面ですよ。
抱きつく少年を、俯かせた顔で見やると、少年はニヤニヤ含み笑いを浮かべていた。
こ、こいつ、嘘ついて、街に入ろうとする輩か。
私を利用しようって魂胆か、そんな不逞な輩は、衛兵に突き出してやらなければ。
私の顔色から何か察したのだろう、少年は腰に回していた手で、クルクル動き回る私の尻尾をグギュッと掴み取った!
「……ぁふ……むんんっ」
「どうした? ネコちゃん」
「……ぁっ……いっいえ、何でもありません」
全身がプルプル震えてくる。
ううっ、ダメ、尻尾、触られたら……不味いぃぃ。
獣人の中でも、特に猫族は、尻尾が弱点と言うか、色々と敏感過ぎてヤバイです。
この子は、恐らく知っている。
だから、今の状態は非常に危険なんです。
こんな、大勢の人目で醜態を晒すのは、何としても避けたい。
私は、少年に屈伏しそうな自分を何とか奮い立たせて、ヤメろと目で訴え掛けた。
少年は声を出さず、口だけ動かして私に協力しろと言って来る。
いくら不意打ちとはいえ、くっうぅ、こんなガキんちょにしてやられるなんて。
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