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涙目で精一杯の虚勢を張り、怒っては見たけど、客観視したら何とも情けない姿を晒している。
人目を避けて正解だった。
その情けない姿も、少年の目に写っていない。
写ってないでは無く、正確には見ていないが正しい。
何故なら、少年は地面に頭を擦り付けて土下座し、私に謝り倒しているから、私が怒るより早くに……。
「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい。どうしても、この街に入る必要があったんです。ごめんなさい、許して下さい」
最初はどうしてくれちゃおうと、思っていましたが、こんなに引くほど謝られたら、何も言えないですよ。しょうがないですね。
「謝らなくて結構ですよ。別に、もう、怒ってませんから、後、理由とか聞きたくないので、お口チャックでお願いします」
「本当に許してくれるのかい? 本当なんだね。ありがとうお姉さん!」
少年は飛んで喜び、私に抱きついて来る。
「わっ、わかりましたから、離れて下さい」
「あっ、ゴメン、お姉さん、この恩は絶対忘れないからね」
「いえ、忘れてくれてもいいですから、早く行って下さい」
「そうだ! はっ早く行かなきゃ! じゃあね、ありがとうお姉さん」
少年は、私に何度も何度もお礼を言いながら、慌ただしく大通りの雑踏に消えて行った。
「はぁぁ……」
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