第1話「猫魔女さん」

13/14
前へ
/352ページ
次へ
 涙目で精一杯の虚勢を張り、怒っては見たけど、客観視したら何とも情けない姿を晒している。  人目を避けて正解だった。  その情けない姿も、少年の目に写っていない。  写ってないでは無く、正確には見ていないが正しい。  何故なら、少年は地面に頭を擦り付けて土下座し、私に謝り倒しているから、私が怒るより早くに……。 「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい。どうしても、この街に入る必要があったんです。ごめんなさい、許して下さい」  最初はどうしてくれちゃおうと、思っていましたが、こんなに引くほど謝られたら、何も言えないですよ。しょうがないですね。 「謝らなくて結構ですよ。別に、もう、怒ってませんから、後、理由とか聞きたくないので、お口チャックでお願いします」 「本当に許してくれるのかい? 本当なんだね。ありがとうお姉さん!」  少年は飛んで喜び、私に抱きついて来る。 「わっ、わかりましたから、離れて下さい」 「あっ、ゴメン、お姉さん、この恩は絶対忘れないからね」 「いえ、忘れてくれてもいいですから、早く行って下さい」 「そうだ! はっ早く行かなきゃ! じゃあね、ありがとうお姉さん」  少年は、私に何度も何度もお礼を言いながら、慌ただしく大通りの雑踏に消えて行った。 「はぁぁ……」     
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加