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気がつくと今日もここにいる。仕事をクビになってから、毎日と言っていい。
会社に行くわけでも無いのに、スーツを着てこんなところにいる自分が惨めだ。
寂れたデパートの屋上で、古ぼけたベンチにぼんやりと腰掛けている。
頭上には腹が立つくらいに晴れた空。
金網の向こうに見える世界には、小さな人の群れ。
スーツに身を包んだり、平日だというのに私服で歩いている人だったり。
どいつもこいつも、俺がこんなところで仕事にも行けず、家にもいられずじっと何かに耐えていることを知らない。
ため息をつく。
100円を入れたら動く遊具が勝手に喋っている。
俺以外誰もいないのに。俺が乗るはずも無いのに。
あいつは誰も乗っていなくても仕事があるのに、自分なりにきちんと仕事をこなしていたはずの俺には今、仕事が無い。
ひどい話だ。
妻に会社に行くと言って家を出るのも疲れてしまった。
今日は家を出るときに妻の顔を見ただろうか。それさえも忘れてしまった。
何もかもが嫌になる。
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