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誰かの気配がして顔を上げる。
さっきまでは誰もいなかったはずの屋上に、小さな人影が見えた。
子どもだ。女の子。それも、小学校にまだ入っていないくらいの歳だろうか。俺には子どもがいないから、年齢はよくわからない。
周りに親の姿は見えない。
女の子は、じっと俺を見ていた。
きっと、買い物をしている間ここにいろとでも言われたのだろう。一人だけでここにいる俺が気になるのだろうか。
俺は女の子から目を逸らした。
ぼんやりと地面を見る。
何もせずに一日を過ごすというのは結構辛い。金があれば別なのだろうが。
目の前に影が差す。
いつの間にか、あの女の子が目の前に立っていた。
どうしたの? などと声を掛けるべきなのかもしれないが、言葉が出てこない。
「川村大和さん」
急に名前を呼ばれて驚く。それも、高い子どもの声で。
口調は妙に落ち着いている。
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