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「死因は、自殺。この屋上からの転落死。つまり、飛び降りです」
淡々と、読み上げる。
頭が痛い。
「理由は、」
「理由は、人生に希望が持てなかったこと。生きていても死んでいても同じだと思ったこと」
口をついて出る言葉。
「なんだ、覚えているじゃないですか。手間を掛けさせないでください」
「覚え……」
覚えている?
俺は立ち上がる。ふらふらと金網に近寄って、下を見る。
道路にはいつもと変わらず、車が走り、人が歩いている。
金網に手を掛ける。
金網に手を掛けた。
上って、そして……。
数日前の。いや、数ヶ月前?
わからない。
忘れていた。
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