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「やあ、あまちん。ウワサの転校生見に来たぜ」
いつものように窓から教室に顔を出したのは牧田だった。
「あーらら。何この塊」
教室の角にすし詰めになった女子を見て、女好きな牧田も流石にびっくりしたらしい。
「この中にいるよ、転校生」
「ふぅん?」
より興味を示したのか、牧田は小野坂目当ての女子たちに声をかけた。
「ねえ、俺にも転校生と会わさせてよ」
声を聞いて振り向いた女子は、その主にまた黄色い声を上げた。
「マキちゃんだ!」
「やっほー」
塊になっていた女子はばらけ、肉食系の勢いに困惑していた小野坂が見えた。
「おお、ほんとにイケメンくんだねー」
「小野坂だよ」
「小野坂クン、ねえ……」
牧田はなるほどなるほど、と呟いている。
すると牧田の後ろから隆平が顔を出した。
「おい、テメェ日直だろう。三池さん一人に仕事させてんなよ」
「痛い痛い! 耳もげちゃう!」
隆平は野次馬をしに来た牧田の耳を掴んでいる。
「周、お前次体育じゃねえの?」
「そうなんだけど、彼の案内頼まれてて……」
小野坂の方を見るとまだ女子に囲まれている。同じクラスの子は更衣室に向かったらしく、先程よりは人が減っていた。が、やはり他クラスの子たちがホールドしていて小野坂は抜けられそうになかった。
「おい、お前ら。そいつ困ってんぞ」
牧田に続いて現れた隆平に女子は目を輝かせている。それは無理もない。学年ツートップのモテ男に加え、帰国子女の目新しいイケメンが一堂に会しているのだ。
「そいつ、次体育だとさ。案内役が困ってる」
囲んでいた野次馬は隆平の言葉に渋々ながらも従い捌けていった。隆平も牧田の耳を引っ掴んで教室に戻っていく。
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