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体育の授業が終わったあと、小野坂と二人でボールと簡易ゴールの片付けをした。体育倉庫は校舎とはグラウンドを挟んで反対側の端にあるため少し遠く感じた。
「ほんとにごめんね。俺のせいで」
「いいよ、別に」
倉庫の鉄の扉を開ける。錆のせいか少し戸が重い。中に入ると蒸し暑く、換気窓から差し込む日が筋で見えるほど埃っぽかった。
「ボールはその奥の空いてるところに置いたらいいよ」
指をさしたところに小野坂は押してきたボールの台車を止めた。その横に簡易ゴールのポールを立てかける。
その時だった。
突然倉庫の戸が音を立てて閉まった。否、閉められた。倉庫の扉は引き戸になっており、立て付けも良くはない。風で閉まることはなかったからだ。
「え、何……?」
外で数人がクスクスと笑っている。
「おい! 何のつもりだよ!」
小野坂は戸を開けようと手をかけるが開かない。外から何かでつっかえている様だった。
「帰国子女だか何だか知らないが、ちょっと気に食わないんだよねぇ」
聞き覚えのある声。サッカー部の三森だ。そういえば先程の授業で小野坂にかわされていた。完全に僻みと嫉妬による嫌がらせだった。
「なんだよそれ……! いいからここ開けろよ! 芳野もいるんだぞ!」
小野坂は戸を殴りつける。この鉄がなければ、多分彼は三森に掴みかかっていただろう。それほど怒りを露わにしていた。
「そのうち出してやるよ。じゃあな」
笑い声が遠ざかっている。完全に閉じ込められてしまった。
「Shit……! 何考えてんだよ!」
また戸を殴る。その拳からは血が滲んでいた。
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