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通話から10分もしないうちに牧田が来た。隆平もいるらしい。
つっかえていたものが外され戸が開かれた。
「おい、お前ら大丈夫か?」
「とりあえず水も持ってきたよ!」
途中で買ってきてくれたのか牧田がペットボトルを寄越した。礼を言い水を一口飲んだ。ふう、と一息つくと牧田が怪訝な顔で聞いてきた。
「で、誰にやられたんだよ。肝心なところは言わないんだもんな」
閉じ込められたことは伝えたが、犯人が三森であることは言っていなかった。牧田が三森と同じサッカー部で、副部長をしているのを知っていたからだ。三森がやったことは最悪生命に関わることなので許し難いことなのだが、小野坂への嫉妬と僻みで起こした行動だと思うとなかなか彼を売ることができない。
「何人かの笑い声しか聞いてないから、誰がやったのかまでは分からない」
曇った表情を察してくれたのか小野坂が答えた。
「そうなのか?」
隆平が確かめるように聞いてくる。コクリと頷いた。助けてくれた二人に隠し事をする後ろめたさから目を逸らす。
小野坂の手が目に付いた。
「そうだ、小野坂。その手……」
彼の左手を取る。力一杯鉄の戸を殴りつけていた手の甲は、関節と戸に擦れて皮膚が剥けて血が滲んでいる。痛々しい傷は見る方も辛い。
「とりあえず、保健室に行こう」
「お、おう……」
炎天下を歩くのは気が進まないのだが、この手の傷を見ると早急にきちんと処置をしたかった。少し早足で保健室に向かった。
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