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 保健室には誰もいなかった。中に入ると保健室独特の薬品の匂いがする。 「そこ、座ってて」 「おう……」  棚から消毒液と塗り薬、ガーゼ、包帯を取り机の上に並べる。 「手、出して」  小野坂が左手を出す。ガーゼに消毒液を含ませて血を拭う。傷に染みたのか眉を顰めている。傷口に薬を塗ってガーゼで押さえる。その上を包帯で固定していった。 「なんか慣れてるね」 「一応、保健委員だから」 「そうなんだ」  包帯の端を結んで止める。 「なあ、二人で世界作っちゃったとこ悪いんだけどさ、俺らもいること忘れないでね?」  牧田がソファーに腰掛けて言った。 「二人とも、なんでここにいるの? 授業に戻ったんだと思った」 「だって授業始まっちゃったし、戻るのも面倒だからサボろっかな~って。なあ、リュウ?」 「俺に振るなよ。お前が連れてきたんだろうが」  薬品棚に使ったものを戻す。 「……オレたち、戻るからね?」 「二人とも、さっきはありがとうな」 「おう、また昼休みなー」  隆平と牧田を残して保健室を後にした。
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