First impression

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 梅雨も過ぎて本格的な夏が始まり、だんだん近づく夏休みを前にクラスメイトたちは浮かれ気味になっていた。  朝のホームルームまでまだ少し時間がある。2年に上がってからクラスが別れてしまった隆平と牧田は、毎朝のようにベランダ伝いに遊びに来てはひょっこりと窓から顔を出す。 「よっす」 「あまちん、おはー」 「おはよ」  隆平も牧田もそこそこ背が高く顔立ちもいい。女子のファンが多く、ファンの間では密かに恋愛ルールがあるとか、告白する順番をあらかじめ決めているとか、色々と噂を耳にしたことがある。 「ちょっとちょっとぉ! 俺もいるんだけどぉ?」  前の席の横田が割って入る。 「ああ、ヨコ。いたのか」 「朝から元気だねぇ」 「お前ら、最近俺の扱いヒドイよな?」  横田はクラスの中でもムードメーカーで、誰からも好かれる人気者だ。しかし隆平や牧田とは違い、恋愛面では“お友達”止まりが多いらしく連敗記録ばかり更新されている。  外は初夏らしい新緑と広く青い空が広がっている。フワッと教室に入ってくる風が涼しくて心地がいい。  こういう平和で楽しい日常が何よりも好きだ。少しでも気が紛れる。  夏は、どうしても『あの日』を思い出してしまうから。
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