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 横田のテンションの高さに少しだけ元気をもらった。 「とりあえず学食行こう? 隆平もマキも待ってるよ」  一人で騒ぐ横田の背中を軽く叩くと、ぶいぶい言いながら財布を持って準備をした。 「ほら、小野坂も」  再び突っ伏していた小野坂に声をかける。顔を上げた彼の額には机に当たって赤く跡がついていた。前髪を上げているから余計に目立つ。せっかくのイケメンが台無しになっているのが残念なのだが、女子ならこの姿でも「可愛い」と言って騒ぐのかもしれないと思うと少しだけ可笑しくなった。 「オレたちと、学食行かない?」 「行く」  そう答えた小野坂は鞄から紙袋を取り出した。 「それ、弁当?」  興味を示した横田が紙袋を指して言った。 「サンドイッチだよ。アメリカにいた時のクセっていうか、習慣でこれに入れてきちゃったんだ」 「ほぉー、アメリカンっぽいねー」  そういうところも様になっている小野坂が格好いいと思った。似合うのが羨ましいとかそういう感情ではなく、ただ単純に絵になるのが格好良かった。そう思ったところで、女子たちのミーハーな思考と同じだということに気付いてほんの少しだけ恥ずかしくなる。  そうこう話すうちに学食に着いた。2台の食券機にはいつもながら長蛇の列ができている。 「俺、食券買ってから行くわ」  横田はそう言って列の後ろへと向かった。  先に来ているはずの隆平と牧田を探す。昼休みの学食は人の出入りも多く探しづらい。  奥の窓辺のテーブルに二人の姿が見えた。6人掛けの席だった。 「二人とも待った?」 「いや、そうでもない」  窓際に隆平と牧田が向かい合わせで座っている。その隣に小野坂と向かうように座った。 「二人とも、さっきは本当にありがとう」  小野坂が改めて礼を言う。律儀な性格がよく表れていた。 「いいのいいの。これも何かの縁だと思ってさ! よろしくな、小野坂クン!」  牧田は隣の小野坂と握手をした。 「なんかマキ、いつもより元気だね?」  何気なく思ったことを言っただけなのだが、牧田が目を逸らしたのが気になった。 「そ、そんなことないよ?」 「何かあったの?」  深く聞いていい事なのか迷ったのだが狼狽えようがやはり気になる。隣で隆平が笑いをこらえているのも引っかかった。
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