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放課後、小野坂と話をするために一緒に帰ることになった。いつもは帰る方向が違うので校門で別れるのだが、今日は話をするために近くの公園まで行くことになった。
公園までの道は終始無言だった。夕日が赤く照らして眩しい。遊具のない開けた場所では子供たちがボール遊びをしていて、元気な声が響いていた。奥の木陰にあるベンチに座ると、小野坂もその隣に腰掛けた。
人に自分のことを話すのは初めてだ。そのせいか少し緊張する。
「……あ、の」
勇気を出して話始めようとするが、上手く声が出ない。
「うん、ゆっくりでいいよ」
小野坂の手が優しく背中を撫でる。ワイシャツ越しに感じるその手は大きくて安心した。
ふう、と深呼吸して改めて話し始めた。
「オレ、水が怖いんだ……。昔住んでたところの近くに、川があってさ……、よくそこで遊んでたんだ……」
途切れ途切れになりながらも少しずつ語る。小野坂は黙って聞いていてくれた。
「その川の中流あたりは、森になっていて、低い吊り橋がかけられてたんだ。……いつもなら大丈夫なんだけど、……その日は前日の雨で、水かさが増してたんだ。吊り橋の下ギリギリの所を水が流れるくらいに……」
子供たちの声がやけに大きく聞こえる。鮮明に思い出す情景に、だんだんと肺が締め付けられるような苦しさが込み上げてくる。
「その川、鉄砲水が多いんだ……。吊り橋を渡っている時に、……突然、……水に攫われたんだ」
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