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着替えて下の階に降りると休憩スペースのテーブルに案内された。紗代さんがそこに紙とペンを置き名札ケースを手渡してきた。
「はい、これに名前書いて入れてね」
下の名前でいいよ、と言って奥に戻ってしまった。
「一緒に働く人たちが分かるように付けるだけだから、深く考えなくていいよ」
そう横田は言うものの、書き始められた彼の名札の紙は色とりどりにデコレーションされていた。それに倣って牧田も隆平も星やハートを書き足していく。
「あまちんももっとデコっちゃえばいいのに」
名前だけをペンで書いたのだが、牧田に紙を取られて色々と書き足されてしまった。
「ほい。せっかくだからこれくらいやらないとな」
戻ってきた名札の紙には可愛いウサギのキャラクターが3羽描き足されていた。牧田はこういう可愛いイラストを描くのが得意だった。
「マキ、俺のやつにも描いてくれ」
小野坂が紙を差し出すと、牧田は快く受け取ってウサギを描き足していく。
「お前、絵が上手いんだな」
牧田の手元を見ながら小野坂が言った。色々な表情のウサギが量産されていく。そのどれもが可愛いかった。
「まあね。俺10個下の妹がいてさ、ノートの表紙とかにちょこっと描いてやると喜ぶんだよね。ホント超可愛いうちの妹……」
「いいか、圭汰。こいつは重度のシスコンだ。妹の話は振ったらダメだぞ」
隆平が小野坂に耳打ちした。確かに牧田は妹の話をしだすとなかなか終わらない。写真を見せてもらったことがあるが、その時は2時間ほど妹の可愛いエピソードで解放してくれなかった。
「ほら、できたぞ」
牧田のおかげで小野坂の名札も可愛くなった。
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