Summer of the 2nd grade at High school

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「……隆平、ありがとう。助かった……」 「お前もそこそこ可愛い顔してんだから、ナンパの上手い断り方ぐらい、覚えておいていいんじゃねえか?」  くくっ、と笑う隆平を軽く小突く。 「冗談やめてよ……。可愛いとか言われても嬉しくないし」 「いや、可愛いと思うぞ? とくに圭汰が来てからは表情が優しくなったしな。お前の笑顔、この前初めて見たもん」 「……そう?」 「ああ。圭汰と話してる時は本当に表情豊かだぞ」  自分では気が付かなかった。確かに小野坂が転校してきてからは楽しいと思うことがとても多くなった気はしていた。ただ、それが表情に出ていたとは自分でも驚く。 「といっても、相変わらず感情まではあまり読めないんだけどな」  そう笑って言った隆平は恭也さんに呼ばれて調理に戻った。 (少しずつだけど、オレ、笑えるようになってたのか……)  客席の間を行き来する小野坂を見る。  もしかしたら、自分の中では小野坂圭汰という人間はかなり大きい存在になっているのかもしれない。隆平の言葉を反芻する。自分の無意識の行動が、他人の目を通して自分に返ってくる。言葉では上手く説明できない不思議な感情が心の隅にポツンと生まれた。
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