The cause of trauma is…

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「……ね、……まね」  誰かが呼んでいる気がする。どうしてそんなに慌てた声なのだろう。 「周!! しっかりして!!」  はっきりとし始めた意識の中、呼ぶ声が母親のものだと認識できた。 「う……、暑っつ……」 「あんた、そんなの当たり前でしょ!! こんな締め切った部屋にいたら、下手したら死んでたよ!!」  カラリと開けられた窓から夜風がふわりと吹き込んできて、体内から絞り出された汗に触れると涼しくて気持ちがいい。少しだけ湿った空気だったから、もしかしたらこれから雨が降ってくるのかもしれない。  身体が重い。頭の奥にズキズキと脈打つように痛みが走る。 「……きもちわる」 「ほら水飲んで、ちゃんと起きなさい」  渡されたペットボトルを開けると、中身が半分になるまで一気に飲んだ。身体が水分を欲していたのだと分かる。  どれくらい寝ていたのだろう。帰ってきたのが昼過ぎくらいだったが、今はもう外は闇に包まれている。時計を見ると短針は8の字を指していた。  今日一日、結局何も食べずに過ごしてしまった。それでも不思議と空腹感はない。隣の部屋から母の作る夕飯の匂いが漂ってくるが、なんだか食べる気がしない。母が食卓へと呼ぶが動くのが億劫だ。しかし昨日の一件があるから、それを母に悟られないよう精一杯努めるために、平静を装い夕餉を胃の中へ詰め込んだ。
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