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河原で水遊びをした後、濡れた髪を乾かしながらケンちゃんの家へと戻ってきた。
「おかえり、……あなた達、また川で遊んだのね? 河原へは子供だけで行っちゃダメだって何度言ったらわかるの?」
「へーきだよ、昨日雨降ったけど朝だけだし」
「そういう問題じゃないの!」
母親に向かって舌を出して反抗するケンちゃんが同じ注意を受けるのを何度も見た。それでいて彼について行ってしまう僕も僕なんだけど。
「いい? あそこの川は水の量が変わりやすいの。勝手に子供だけで水に入っちゃダメよ」
「はーい」
全く反省の色が見えない返事をして、食卓に用意された蕎麦を食べ始めた。
「なあ、シュウ。午後は虫取りしに行こうぜ!」
「虫取り? でもケンちゃん、取った虫ちゃんと育てられないじゃん」
「うっ……。ま、まあ、今日はきゃっちあんどりりーすってのをするんだよ」
「きゃっち……?」
「捕まえてもすぐ逃がしてあげるの。夏休みの宿題で絵日記があるだろ? そこに描くんだよ」
「それいいね!」
ちゅるちゅると蕎麦を啜りながらそんな話をしていると、ケンちゃんママがカバンを2つ用意してくれた。
「はい、これ。虫取りに行くんでしょう? 水筒とおやつ入れといたからね」
「母ちゃんありがとう!」
「こっちは周くんのね」
「僕のも? いいの?」
「もちろん」
ケンちゃんママの笑顔は好きだ。ニッコリ微笑んだ顔を見るととても心が温かくなる。差し出されたカバンを受け取ると、ぎゅっと胸の中で抱きしめた。
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