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「ごちそーさまー。シュウ、行くぞ!」
食べ終わるなり、すぐに準備をしてソワソワしている。
「ケンちゃん早いよ……」
急かされて残った蕎麦を口の中に押し込み、渡されたカバンを方に下げて彼のあとを追った。
玄関の外で虫取り網と籠を持ったケンちゃんが待っていた。
「おせーよ。早く行こうぜ!」
「うん!」
いつも虫取りをする時は川の近くの森へ遊びに行く。そこにはクヌギの木がいっぱい生えてるから、カブトムシもクワガタもたくさん取れるのだ。
森の中へ入ると木と葉っぱの隙間からキラキラと光が差していて、暗くて怖い森とはだいぶ印象が違う。ちゃんと道ができているし、入口の方にも橋の方にも案内板があって迷うこともない。
「よーし! 俺こっち探すから、シュウはあっちな!」
「分かった。見つけたら呼びに来るね」
「おう!」
二股に別れた道で、ケンちゃんはさらに奥へ続く方に、僕は川の方へ続く道へ進んだ。
緑と茶色に囲まれた場所には、ミンミンと鳴くものやジージーと鳴く蝉の声で溢れている。よく耳を澄ますと川の流れる音も聞こえてくる。
木の上の方を見ながら虫を探すけど、見つかるのは蝉ばかり。ケンちゃんはカブトムシやクワガタを捕まえたいらしいから、そいつらも鳴いてくれたら見つけやすいのになと思った。
結局河原へ出るまでに、一匹も目的の虫は見つけらなかった。
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