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「はぁ、なかなか見つからないなぁ」
河原に出てから、丸くて平たい石を拾っては川の水面に向かって投げる。水切りをケンちゃんに教わってからたまに練習するのだ。まだ2回までしか石は跳ねないけど、ただ川の中に放り投げていた最初に比べたらだいぶ成長したと思う。
「シュウ、何やってんだ?」
「ケンちゃん……」
後ろから声をかけられて振り向く。虫取り網を肩に担いだケンちゃんが立っていた。虫籠の中は相変わらず空のままで、ケンちゃんもまだ目当ての虫は捕まえられていない様だった。
「水切りしてるの。この前ケンちゃんに教わってから練習したんだよ。見てみる?」
「5回できるようになったら見てやるよ」
「えー?」
「それよりも早く行こうぜ! あっちにでっかいクワガタがいたんだよ!」
「ほんと!?」
「おう! こんなでかいヤツ!」
両手で表された虫の大きさは僕の手のひらよりも大きかった。
「早く捕まえに行こうぜ!」
「うん!」
ケンちゃんの後ろをついて玉砂利の上を走る。もと来た道を辿るように分かれ道まで戻ってきた。そのままケンちゃんが最初に行った方へ走った。あまり運動が好きじゃない僕には、この森の中を必死に走ってついて行くのでやっとだった。だけどケンちゃんは、遅れがちな僕を立ち止まって待っては、早くしろよ、と急かすくらいには元気だった。
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