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一本の大きなクヌギの木の前でケンちゃんは立ち止まった。
「ほら、あそこ! でかいだろ?」
それから木の上の方を指さした。手でどころか網でも取れそうにないくらい高い位置に大きなクワガタがいた。
「あれどうするの?」
「もちろん捕まえるに決まってんだろ!」
そう言ってケンちゃんは虫取り網を構えるがもちろん届きそうにない。
「あんなに高いとこ、届かないよ……」
「だからシュウもどうしたら捕まえられるか考えてくれよ」
「えー、僕も?」
肩車をして捕ろうと試したり、木に登ろうとしたり。2人でどうしたらあの高いところにいるクワガタに届くのか考えている時だった。
「あっ!!」
クワガタは羽を広げてどこかへ飛んで行ってしまった。
「あー、行っちゃった……」
残念そうにクワガタの飛んで行った方を見つめながら溜め息を吐いた。そんなケンちゃんの肩をポンと叩いて、
「また探しに行こ?」
そう声をかけるとしょんぼりした顔が晴れて、
「おう!」
と太陽みたいなキラキラした笑顔を向けてくれた。
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