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森の中には僕とケンちゃんだけの秘密の場所がある。そこは大きな岩の上で、寝転んで上を見ると邪魔するものがなくぽっかりと丸く青い空が見えるのだ。
いつもみたいにその岩の上に登った。
「今日のおやつ何だろうね」
「どうせまたバナナとクッキーだろ?」
「あはは……」
ケンちゃんママに貰ったカバンを開け、中に入っているものを2人して広げた。
「あ、今日は梨だ!」
「やったね! 俺バナナよりこっちの方が好き」
小さなタッパーに入った梨を一口齧ると、冷たくて甘い果汁が口の中に広がって暑さを忘れるくらいだった。
早々に食べ終わったケンちゃんは岩の上にゴロンと寝転がった。
「食べてすぐ横になったらウシになるって母さんが言ってたよ?」
「そんなのメイシンだろ? いいんだよ、ここには俺とお前しかいないもん」
そう言ったケンちゃんは両手足を思いっきり伸ばして空を見た。
「ここからなら、いっぱい星見えそうだよなぁー」
「そうだね。でも、僕は星より月の方が好き。それから、月より太陽の方が好き」
「それ、ずっと言ってるよな。どうして?」
どうして、と聞かれたのは初めてだった。
「うーん……、太陽はケンちゃんだから、かな」
「俺? なんだよそれ。じゃあ月は?」
「月は僕。月は太陽の光に照らされて光ってるって図鑑に書いてあったから」
「ふぅん、よくわかんねぇけどシュウは物知りだなー。……あっ!」
何かを思い出したように、起き上がったケンちゃんがカバンの中を漁り始めた。
「あっれー……、おかしいな。置いてきちゃったかな」
「何を?」
「シュウの誕生日プレゼント」
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