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「僕の?」
「おう! だって今日はお前の誕生日だろ?」
そうだ。ケンちゃんの言う通り、今日は僕の誕生日なのだ。とても嬉しいことだけど、それを言うとみんなが気を使う。母さんは仕事が忙しいし、あまり裕福じゃないから僕のプレゼントとかにお金を使って欲しくない。今は特に欲しいものもないし。
だけど、ケンちゃんからプレゼントを貰えるのかもと思うとやっぱり嬉しい。思わず笑顔が零れてしまう。
「ふふっ、覚えてたの?」
「当たり前だろ! たんぽぽ組からの仲だからな!」
「なにそれ」
顔を見合わせてひとしきり笑うと、ケンちゃんに手を引かれて岩から降りた。
「橋の向こうへ行ってみるか」
「そういえば、そっちは探したの?」
「ん?」
「虫だよ。橋の向こうは行ってみたの?」
「まだ」
「じゃあ行ってみようよ! あっちならいるかもしれないし」
「そうだな」
手を繋いだまま橋への近道を通る。近道の目印として木の根元に小さくバツ印を付けてあるからそこを辿ればいい。一番の目印は
3本の木。蔦が絡まっているから印を付けなくてもすぐに分かる。そこを抜ければ橋までの小道に出る。
「シュウのプレゼント忘れちゃったからな。そのついでに虫探しもするかー」
「ついでなの?」
「虫よりも、お前のプレゼントの方が大事」
何が貰えるのかはまるで分からなかったけれど、その言葉に少しだけ照れくさくなって繋いだ手をギュッと握り直した。
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