Forever in my heart

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 吊り橋に着くとケンちゃんは木の板の上を慎重に歩き出した。頑丈に作られてはいるけど、お向いのおばあちゃんが小さい頃からここにあったって言ってたからものすごく古い橋なのかもしれない。この竜京橋には古いお話があるんだっておばあちゃんは言ってたけど、竜だとか神様だとか、そういうお話だったから僕にはよく分からなかった。 「ねえ、プレゼントって何?」 「今から取りに行くんだから、ひ・み・つ。先に言っちゃったら面白くないだろ?」 「取りに行くの? でもさっき忘れたって」 「埋めたんだよ。その方が宝探しみたいで面白いだろ? だけど渡そうと思った地図置いてきちゃったから」  足元の板が川の水に濡らされて、だいぶ滑りやすいみたいだった。いつもより少しだけ川の水が多い気がしたけど、今朝泳いだときは大丈夫だったから心配ないと思う。  先に吊り橋に足をかけたのはケンちゃんだった。 「ケンちゃん、滑らないように気をつけてね」 「分かってるって! ほら、シュウも来いよ!」 「うん」  差し出されたケンちゃんの手を掴んだ。手を繋いでいない左手で、吊り橋のロープをしっかりと掴む。滑りやすい木の板をゆっくりと踏んで進んでいった。  10メートルくらいの短い橋だけど、人が歩くとゆらゆらと揺れてちょっとだけ怖いのだ。2人で手を繋いで橋の真ん中辺りにさしかかった時だ。 「うわっ!」  足を滑らせたケンちゃんが派手に転んだ。その拍子に手に持っていた虫取り網を川に落としてしまった。 「ああ! 網!!」  両手でケンちゃんの手を掴んで引き起こすと、彼は手摺り代わりに持っていたロープから下の川を覗き込んだ。 「ケンちゃん大丈夫?」 「うん、大丈夫……」  一緒に下流の方に流れて言ってしまった網を眺めて、しょんぼりするケンちゃんの肩をポンと叩いた。手を取って、行こう、と声をかけるとケンちゃんは小さく頷いた。
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