第1章

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  窓の外を眺めてみると、小雨が降りだしている。ここは、とある大学の一教室であり、書棚には「必見!都市伝説」や「ほんとうにありそうな怖い噂」等、ホラーに関する書物が有に100冊は詰め込まれているだろうか。 机は長机が一つのみ、椅子は古びており、触れれば、今にも壊れそうな物が数脚置かれている。教室の広さは大体10畳ほどであり、約5人も人が入れば窮屈感を感じる広さである。その教室内では、今騒音が響いていた。騒音という表現が生易しいほどであるが、二人が相変わらず言い争っているのである。  「だから、幽霊は本当にいるの!」  「そうであれば、証拠を見せてくれないか。いつも君の話は辻褄が合わないから聞いていて不愉快になる」  「証拠ならある……昨日、友達が写真を撮って見せてくれた!ほら、見なさいよ!」  「そもそも、その写真が加工されていないのかも分からないのに、それが証拠になると?やはり君は大馬鹿者だな」  「なんですって……」  サークル活動は平日の午後5時から行われる。最早、この二人の言い争いが名物になりそうな程、ほぼ毎日喧嘩が続いている。 私は、二人にはそれぞれ良い部分があるのになと思いながら、遠い目をして教室の隅で喧嘩を聞いている。今回の喧嘩の原因は今、大学内で噂が広まっている都市伝説と呼ばれる分野に入る話であり、簡潔にまとめると、  大学から徒歩15分で着く森林公園の池にに橋がかかっている。夜中の0時丁度にその橋の真ん中に立っていると、背後から男女とも分からない声が聞こえる。声に対して、振り返ると首に×印を付けられる。振り返らず、そのまま橋を渡り切ると、声は聞こえなくなる。  以上が今、大学内で広まっている噂であり、面白半分に検証する者、全く信じない者、通り魔の仕業だと決めつける者と分かれており、この噂のどこまでが本当であるのか、私も分からない状態である。 噂が広まり出したのは、今年の5月始め頃からであり、現在6月も半ばであるが、まだ衰退の兆しは見られない。ネット上でも、話題になっており、一部には本当に傷を付けられたという人も存在する。  もちろん、このサークル内でもこの話題で持ち切りであり、明音は「かまいたちの仕業」と決めつけてまでいる。
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