第4話 ~きっかけは思わぬところからやってくるようで~

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 ▽▲▽   「荘厳――。そして力強さと艶めかしさを内包した凛とした立ち振る舞い。……間違いない。この像はチキューの守護女神。そうだろ? かなめ」 「いや、ただの美少女フィギュアだ。……ところでカルロッテ」  大ヒットアニメ、『オークロードと女騎士団長のプレイが激しすぎて困ってます』のフィギュアを見上げていたカルロッテがこちらを見向く。 「なんだ?」 「いいのかよ? 王女様ともあろうお方がこっちの世界に来ちまってさ。両親も心配しているんじゃないのか?」 「それは大丈夫だ。お抱えの侍女が私に(ふん)しているからな。私はいつもそうやって窮屈な城を抜け出しているのだ、ふふん」  腰に手をやり、胸を逸らすカルロッテ。  その様は、悪いこと自慢で得意げになっている悪ガキのようだった。   「じっとしていることが苦手なお転婆(てんば)姫ってやつか。それでそのお転婆姫さんはこれからどうするんだ? 俺の家で冒険でも始めるのか?」  カルロッテは「それも悪くはないけど……」と腕を組む。  でもその視線は窓の外に向けられていて、俺の頭上に嫌な予感ってやつが落下してきた瞬間、こう叫んだ。 「外で冒険がしたいっ! チキューという広大なフィールドを思いっきり楽しみたいぞっ! よしっ、そうと決めれば早速――」 「“ダメだ“」    俺は視線を下にして、カルロッテから逸らす。 「なぜだ? なぜダメなのだっ?」 「な、なぜってそれは……それは…………」  理由として“それ”を口にするべきか逡巡(しゅんじゅん)する俺。  そのとき、上目使いで見つめてくるカルロッテの瞳が罪悪感を喚起した。  “それ”とは別の嘘を吐くことへの罪悪感を――。 「……かなめ?」 「いや、……ダメじゃない。行くか、外」 「うんっ!」  カルロッテの顔に満面の笑みが浮かぶ。  すると彼女は俺の胸ポケットに飛び込んだ。  どうやらそこがカルロッテの定位置となったらしい。  ……違う、罪悪感だけじゃない。  どこかにこれをきっかけにしたいという気持ちがあったから、だから――。  俺は玄関で靴を履き、そして扉を開ける。    2か月振りの外出。  最初の数歩は重くて――でもしばらくすると、足は“重し”のようなそれから解放された。
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