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そのあと別のアトラクションも、いくつか乗せられた。
しかしジェットコースターのスリルの前にはもの足らりなかったらしく、結局そのジェットコースターに13回乗ることになったのだった。
「それは何だ、かなめ? いい匂いが漂ってくるけど」
ベンチに座ると、カルロッテが胸ポケットの中から聞いてくる。
爆発コントみたいに髪の毛がぼさぼさになっているが、どうやら風を感じすぎて、その状態で固っているようだ。
「ソフトクリームっていう甘いお菓子だよ。食べてみるか?」
「いいのかっ? ではお言葉に甘えて……」
ソフトクリームを近づけると、カルロッテが上体を前に逸らす。
でも微妙に届かなくて、俺は上半身を前方に傾けてやる。
すると、「あわわっ!?」と体勢を崩したカルロッテがソフトクリームの中に落下した。
「あ」
「あわっぷぷぷっ――あ、あまぁいっ! けど溺れるうううううっ、た、助け、かなめ――」
俺はジタバタしているカルロッテの足をつまみ上げると、ベンチにそっと置く。
次にペットボトルの水を上からかけると、全身のソフトクリームを洗い流してやった。
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか。いやでもまだソフトクリーム臭いな。うぅ、湯浴みしたいぞ」
「湯浴み? ああ、入浴か。そうだな、服だって脱ぎたいだろうし、もう家に戻るか?」
「……」
答えないカルロッテ。
何かをじっと見ているようなので、俺はその視線を追う。
そこには仲睦まじいカップルがいて、体を寄り添って笑顔で会話をしていた。
「カルロッテ?」
「私がもしかなめと同じ大きさだったら、あんな感じなのかな。……あんな風にかなめと仲良くするのかな」
カルロッテはそう呟く。
「あれはカップルだからだろ。……俺達は別にカップルじゃないし、だからあんな感じにはならないと思う。大きさとか関係なしに、さ」
間違ったことは言っていない。
なのに余計なことを口にしたような……そんな気はした。
「そう、だな。うんっ、そうだ。……さて、十分遊んだし、かなめの家に戻るぞ。よし、レッツゴー湯浴みっ」
胸ポケットに入ったカルロッテが前方を指さす。
そして歩き出す俺。
そのとき、1つの疑問が脳裏を過った。
こいつ、替えの服なんて持ってないだろう――と。
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