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まただ。
また既視感が脳裏を過った。
前回よりもはっきりと、それも愁いを帯びたような表情のカルロッテ。
いや、でもこれはカルロッテじゃない……?
なのになぜ、俺はこの幼い女の子をカルロッテだと思っているのだろうか――。
あれ?
そこで俺は気づいた。
俺の胸ポケットの中にいるはずのカルロッテが、いなくなっていることに。
「カ、カルロッテっ? おいっ、どこに行った、カルロッテッ!!」
カルロッテは指人形よりも小さい。
そんな奴が床をうろうろとして、もしも誰かに踏まれようものなら――。
ゾワッと肌が粟立ったところで、近くのUFOキャッチャーから喚声が上がる。
思わずそちらに視線を向けた俺は、仰天した。
UFOキャッチャーのアームに挟まれて、子供にゲットされているカルロッテがいた。
その光景を、目を見開いてスマートフォンで撮影している母親。
ジタバタと暴れるカルロッテはやがて穴に落ちて、緩衝材の上でポンと跳ねる。
刹那、俺は100円玉を子供に握らせると、カルロッテを取り出し口から引っ張り出して、ゲーセンからダッシュで退避。
母親の叫び声が聞こえたが、当然無視した。
「お前、何ゲットされてんだよっ! どうやって中に入ったか知らないけど、UFOキャッチャーで異星人が捕獲されるとか、どんなギャグだよっ!」
走りながら俺はカルロッテに聞く。
「巨人が開けた瞬間を狙って入ったのだ。なんか楽しそうだったから。でもつかまるとは思わなかったぞ。ハハ」
……笑い事じゃねーぞ。
その日、俺の部屋に戻ってパソコンでニュースを見ると、「YAFOO!ニュース」のトップページにカルロッテの記事及び動画があった。
おそらく動画を撮った母親がSNSで投稿したのち、バズって即ニュースへとなったのだろう。
――笑った。
俺は、腹を抱えてすげー笑った。
冷静に見れば、滑稽としか言いようのないその光景に。
すると、自分のことなのにカルロッテも笑いだす。
その後、二人でバカみたいに笑い続けていた。
こんなに笑ったのは、本当に久しぶりだったような気がする。
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