第7話 ~もしかして生まれて始めての恋かもしれない~

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「お前たちは包囲されている。直ちに武器を捨てて投降しなさーいっ!!」  武器を捨てて投降しなさーいっ――……。  投降しなさーいっ――……。  なさーいっ――……。    自分でもとんでもなくうるさいと思える声。  それが渓谷ということもあり、反響する、反響する。    すると思った通り、『巨窟ゴリアテ』からモンスターが出てきた。  ずっしりとした体格の豚顔モンスター。  多分オークだろう。その耳を押さえるオーク達の大半は『勇者の大音響(ヒーロー・スーパーボイス)』によって致命的な音響外傷を負ったのか、足はふらふらだった。  数が少ないように思えるが、屋内で天に召されたのがたくさんいたのかもしれない。  俺は目一杯息を吸う。  そして、これで最後だと言わんばかりに、声を放出した。 「YOU(ユー)、社会人? 俺は勇者でえええええええええええすっ!!!」  200dB(デシベル)を優に超えていると思われる絶叫(ダジャレ)が、渓谷を通り抜ける。  立って耐えてやろうという気概(きがい)のあるオークは一体もいなかった。
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