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え? 俺はリアルが充実しているから興味がないって?
そういう奴は180度回転して、はい、さようなら。
誰だって勇者になれる異世界――。
異世界テンプレ読んでる少年だったら憧れて当然だし、人生詰んでるおっさんだってワンチャンものにしようと、どこかで乞い願ってるはずだぜ。
17歳の少年という正に異世界転移に相応しい年齢で、その異世界転移を願う。
且つ、“現実世界に特にこだわりがない”という、素質?だってある。
つまり俺は、“何らかの特異な事象に於いて異世界転移し得る可能性を僅かでも持ち合わせている“と言っても過言ではない。
――と思っていたのが、ついさっきのような気がする。
ちなみに今現在俺の頭に浮かんでいるのは、“いや、これはちょっと違うんじゃないのか”という失望の念。
折角、異世界転移したっぽいのに、なんだってこんなオリジナリティをぶッ込んでくるんだというガッカリ感。
屋外の浜辺。
そこが多分、俺がいる場所。
どうやら仰向け状態で手足を拘束されているらしい俺は、左右に首を動かしたのち、自分の胸を見る。
正確に言えば、胸の上に乗っている生物を。
「もう一度聞く。お前は何者だ? 説明しなければ命の保証はないと思え」
その生物――コロポックルみたいな小指大の異世界人(♀)がしゃべる。
遠近調節がうまくいっていないのかと、もう一度目を瞬かせる。
でもやっぱりその仁王立ちしている異世界人はちっぽけだった。
俺の周囲に密集している異世界人もまた――。
「くっそぉ、マジかよ。失敗だろー、これ」
落胆の声を上げる俺は、ふと『ガリヴァー旅行記』という小説を思い出した。
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