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▽▲▽
その日もカルロッテは俺に付いて地球にやってきた。
反対する理由などない。むしろ来てほしい俺はそれを嬉しく思っていた。
カルロッテとは動物園に行った。
自分よりはるかに大きい動物を見ては、表情豊かに驚きの声を上げるカルロッテ。
そんなカルロッテを見ている時間のほうが、動物を見ている時間より長かったような気がする。
それからも異世界『ドワフリア』と地球の行き来は続いた。
午前に『ドワフリア』で魔王軍の拠点を破壊して、午後は地球で遊ぶ――。
それはいつだって俺とカルロッテの二人っきりだった。
巨人と小人。
だけど少年と少女であることに違いはなくって、そこに特別な感情が生まれたっておかしくはない。
少なくとも俺は――……。
「ねえ、かなめ」
胸ポケットのカルロッテが声を掛けてくる。
「ん?」
電車に乗っている俺とカルロッテ。
のんびりできる河川敷に行った帰りだった。
空いている時間帯なのか、乗車している車両には俺のほかに乗客は二人しかいない。
対面する座席で寄り添って眠る若いカップルがそれだった。
「私がもしかなめと同じ大きさだったら、あんな感じなのかな。……あんな風にかなめと肩を寄り添ったりするのかな」
「なんかどっかで聞いたような気がするな、それ」
「うん。同じこと聞いてる。だからもう一度答えてほしい」
真意が読み取れない。
カルロッテはどう答えてほしいのだろうか。
……いや、そうじゃない。
俺の思っている気持ちを、素直に言葉に乗せればいいだけのことなんだ――。
だから言った。
「カルロッテが嫌じゃないのなら、俺は寄り添いたい」
少しの間。
するとカルロッテは口にした。
「嫌じゃない。私も同じ気持ちだから」
「良かった」
「……――だったらいいのにな」
「え?」
「同じ大きさだったらいいのにな。もしそうなら――」
そのとき、電車のアナウンスが最寄りの駅に着いたことを知らせる。
アナウンスにかき消されそうなその声だったけど、俺は聞き逃すことはなかった。
……――もっと幸せだったと思うから……――。
カルロッテの紅色に染めた頬が見えるかのようだった。
……ああ、これマジなやつだ。
生まれて初めての本気の恋。
俺はどうやらその相手に、人間ではない小人を選んでしまったようだった。
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