第8話 ~魔王を倒して俺は日帰り勇者を引退します~

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第8話 ~魔王を倒して俺は日帰り勇者を引退します~

「かなめ、大丈夫っ?」  カルロッテの心配そうな聞こえる。  それもそうだろう。  俺は最終決戦地である『魔王城』で大苦戦していた。  理由は三つ。    食料としてのパンと水を持参していたとはいえ、目的地まで一日半という険しい道程で疲労が蓄積されていたこと。    傾斜を描く切り立った崖の先端に建っている『魔王城』。その下の毒々しい沼に足を取られて思うように動けないこと。  大きな蝙蝠(こうもり)のような生物に乗っている魔王軍達の攻撃が予想以上に激しくて、極寒仕様の厚手の服の防御力を超えてきたこと。    ――いや、最大の理由は「最後くらいは私も戦うぞっ」と、ワイバーンに乗ってきたカルロッテが気になって仕方がないということだった。 「俺は大丈夫だっ。心配なのは――お前だよっしゃあああぁッ!!」  俺は武器であるつるはしを崖に叩きつける。    作戦はこうだった。  “崖を砕いて魔王城を崩落させてしまおう”という。    実際この作戦はうまくいきつつある。  だからこそ、そうはさせまいという魔王軍の死に物狂いの総攻撃があるのだろう。 「私だって、大丈夫だっ。『聖光の戦乙女(ホーリー・ヴァルキリー)』の異名は伊達ではないというところを見せてやるっ」 「初めて聞いたけどな、その異名っらあああああッ!!」    ツルハシを振り回して数体の魔王軍を蹴散らすと、俺は再び崖に打ち付ける。  もう少し。もう少しで崖は崩れる。  魔王軍の攻撃で体が悲鳴を上げているが、もう少しで俺はこの世界『ドワフリア』を救うことができる――。
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