第8話 ~魔王を倒して俺は日帰り勇者を引退します~

2/3
前へ
/27ページ
次へ
 ――そのとき。 「むっ。あれは魔王っ!! 奴は『ミゼットガルド』の王女である私が倒すッ。やあああああああッ!!」 『魔王城』の中にいると思っていた魔王。  その魔王が外にいたらしく、見つけたカルロッテが右手に剣を構えて左方へと飛翔していく。  カルロッテの向かう先。そこには、真っ黒いドラゴンに乗った赤い鬼のような生物――魔王がいた。  カルロッテの三倍ほどの大きさである魔王。  その魔王の乗るドラゴンの口の中に禍々(まがまが)しい炎を認めたとき、俺は胸のざわめきから叫んでいた。 「待て、カルロッテっ、そいつに近づくなッ!!」  しかし、聞こえていないのかカルロッテは止まらない。  刹那、ドラゴンの吐く凄まじい猛炎がそのカルロッテに襲い掛かる。  間一髪で避けるカルロッテ。  ――だったのが、避けた先にいたモンスターと激突してその身を宙に投げた。 「カルロッテっ!!」  俺は手を伸ばして、カルロッテをなんとか受け止める。  その間、魔王軍の攻撃が俺の体を痛めつけるが、気にしている暇などなかった。 「おい、カルロッテっ! カルロッテッ!!」    声を掛けるが、カルロッテは身動き一つしない。  まさか――という“最悪の事態”が頭を横切ったとき、俺の中にかつてない怒りが溢れた。  近づくモンスターを捕まえてグシャリと握りつぶすと、喉の奥から声をしぼり出す。 「……てめーら、絶対許さねえからな。一体残らずぶちのめしてやる――ッ」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加