第8話 ~魔王を倒して俺は日帰り勇者を引退します~

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▽▲▽ 『ミゼットガルド』に帰還した俺に、王様及び国民は総出で感謝した。  その後、世界に平和が戻った記念祝典とやらに俺は招かれた。  ――が、当然のごとくそこで出される豪勢な食事に舌鼓(したつづみ)を打つこともできず、どうせ楽しめないのならと例の浜辺で海を打ち眺めていた。 「いつつっ。絶対、服脱いだら切り傷だらけだな、これ」  俺はふと、空を仰ぎ見る。    大きな従星が3つ浮かぶ、壮大な青天井。  それは何度見ても感嘆の声が出る幻想的な絵画。  俺は今までで一番長い間その光景を望み続けると、やがて「よし」と気持ちを固めた。  「勇者殿、今よろしいかな」  不意に横から聞こえる声。  顔を向けると老女神フラーファがいた。 「女神様ですか。――どうぞ。少しくらいならいいっすよ」 「では手短に。魔王が倒され世界に平和が訪れたこともあり、役目を終えた転移ゲートがもうすぐ消滅します。もしも帰られるのなら、すぐに用意したほうがいいかと思います」  どうやら決意の必要はなかったらしい。  そしてそれは、なんとなく予想できたことでもあった。   「オッケー、大丈夫です。丁度今から帰るつもりだったんで。――よっとっ」  俺は痛みをこらえて立ち上がる。  そして最後となる深呼吸で、異世界の空気を存分に味わった。  するとそのタイミングで老女神フラーファが問い掛けてくる。 「……よいのですか? カルロッテ様に最後のお別れをしなくても」  カルロッテ。  彼女は今現在、城の自室で横になっているはずだ。  意識を取り戻したものの、安静にしていなければならないという周囲の声にしぶしぶ従って。 「いや、いいんですよ。俺、そういうの苦手なんで。それじゃ、帰りますね」  俺は転移ゲートのある崖のほうを見遣る。 「本当にありがとうございました、勇者様」  背中に届くその声に俺は右手を上げると、やがて足を踏み出した。
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