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「ええ、そうです。確かにわたくしめがチキューという星から召喚しました。魔王軍の脅威から民を守ってもらうために――。いやでもこんなに大きいとは思わなんだ……」
女神様がいるらしい。
俺は一抹の不安を抱きながら、声のした右側に顔を向ける。
そして、ああ、やっぱりなと心底落胆する。
「本当にでかいのぉ。――でも若くていい男」
そこには出るとこ出た美貌の女神様ではなく、しゃがれた声の老女神がいた。
――こっちも失敗かよっ。
▽▲▽
『ドワフリア』
それがこの異世界の名前だということだった。
そして俺は現在、その『ドワフリア』の王都『ミゼットガルド』のメインストリートを歩いている。
見渡せば、四方に広がるファンタジックなミニチュアワールド。
それは鳥肌がたつほどの絶景であり、オリジナリティも悪くないなと思い直す俺だった。
「建築物に気を付けるのだぞ。――って、言ってるそばから足で蹴っちゃダメじゃないかっ。ああ、歴史ある中央広場の噴水が……おい、かなめ、しっかり注意して歩くのだっ」
小人女――カルロッテが口うるさく注意を与えてくる。
俺が勇者と分かったあと彼女の態度は幾分軟化したが、元々の気質が勝っているのだろう、俺のワイシャツのポケットに入っているくせに口調は生意気だった。
「道の真ん中にあるから悪いんだろ。蹴られたくなかったら横に寄せておけよ」
「そんな言いぐさあるかっ。かなめが規格外に大きいからいけないのだ。ああ、ほらまた街路灯壊してっ。……慎重にゆっくり、綱渡りの要領で進むのだぞ」
「……食らえ、『勇者の鼻息』」
俺は右の鼻の穴を押さえて、フンッとする。
すると左の鼻の穴から出た鼻息が、胸ポケットに入っているカルロッテに直撃した。
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