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「ぷはあああああっ!? なな、何をするんだかなめっ! いきなり何を――」
「チビのくせに生意気だからだよ。俺は勇者だぞ。魔王軍を倒して欲しかったら上から目線はやめてもらおうか、ふん」
「私だって『ミゼットガルド』の王女だ。例えかなめが勇者であろうと媚びるつもりはない。王女である以上、何者にもへつらうことなく崇高な存在でなければならないのだ。それが全ドワフリア人にとっての王女像であり、私自身が強く望むものでもあるっ」
「そうか、分かった」
そして俺は胸ポケットを揺らす。
「あわわわわわわっ! や、やめ――かなめっ、やめ――あああぁぁあぁあっ」
ポケット中で転げまわっているカルロッテ。
その様は、崇高な存在とは思えないほどに無残なものだった。
大丈夫だ、カルロッテ――民には見えていないから。
俺はニタリと笑うと、眼前に目を向ける。
目的地である王城、バッシュフル城がすぐそこにある。
それはまるで、某夢の国にあるランドマークかのように幻想的でもあった。
▽▲▽
その後俺は、いつの間にか集まっていた大勢のドワフリア人に囲まれながら、王様と王妃様――つまりカルロッテの両親に謁見した。
謁見といっても俺が城の中に入れないので、城の前にある大広場でだが。
「おお、勇者よ、よくぞ来てくださいました」から始まる王様の話は、なんだか某国民的大作RPGを彷彿とさせる内容であり、要するに魔王を倒してこの世界から闇を払って欲しいという、とても分かりやすいものだった。
俺は首を縦に振る。
色々と納得できないことがあるものの、そこを断ってはダメだろうとの思いから。
しかし、相談役らしい爺さんが「信用ならんですな。魔王の手の物かもしれんですぞ」と王様に吹き込み、話をややこしくさせようとする。
するとその言動に憤りを覚えたのか、老女神のフラーファが「こんの、ジジィっ、私が召喚したのが魔王の手先だっていうのかいっ」と言いながら、その爺さんにつかみかかる。
えらい剣幕でポコスカと殴り合う二人。
それを仲裁するカルロッテが俺を見上げて言うのだった。
「『ウォーロックの砦』に向かうぞ。魔王軍の最前線であるあの砦をかなめが落とせば、誰だってかなめのことを勇者だと信じるはずだからな」
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