13人が本棚に入れています
本棚に追加
第3話 ~失敗だけどこれが本当のチート無双とも言える~
「あれが『ウォーロックの砦』か」
『ミゼットガルド』の北西約300メートルにある森の中、そこに木材で建築された広大な砦が見える。
「そうだ。『ミゼットガルド』を脅かす魔王軍の最前線だ。さあ、行くぞかなめ、我らと共に戦い抜くのだっ」
膝を付いて座っている俺の横で、剣の切っ先を『ウォーロックの砦』に向けるカルロッテ。
そんなカルロッテに俺は言ってやる。
「いや、邪魔だからお前とその後ろの騎士団も来なくていい」
「邪魔とかっ!? な、なぜそんなことを言うのだっ。共闘したほうが勝率が上がるのは当然だろうに――ッ!」
「そんな僅かな勝率アップはどうでもいいんだよ。俺はこの世界では圧倒的な力を持つ巨人だぞ。すぐに終わりにしてやるって……こんなふうに」
俺はカルロッテの座っている場所のすぐとなりを拳で叩く。
すると地面が揺れて、カルロッテがひっくり返った。
再び御開帳するピンクのパンツ。
「お、驚かすなっ! ……それでっ? 今のがなんだというのだ?」
「見てりゃ分かる。さてと……」
俺は立ちあがると屈伸を始める。
そしてクラウチングスタートの姿勢へと入ると、「よーい、どんっ」で地面を蹴った。
50メートル先の『ウォーロックの砦』がグングンと近づいてくる。
俺はタイミングを見計らうと「『勇者の三段跳び』」を開始する。
「ホップ」
揺れる草原。四方から動物の啼き声が聞こえた。
「ステップ」
ざわめく森。野鳥という野鳥が空へ飛び立つ。
「ジャンプッ」
砦の入り口の真ん前に着地した俺は、そのまま勢いを付けて奥へと滑り込む。
着地したときの振動、そして滑り込んだ際の勢いで、入り口を始めとした周辺の建築物が音を立てて瓦解していく。
予想以上の破壊者っぷりに、心中で歓喜の声を上げる俺。
そんな俺の指に何かが当たる。
俺はその、“こと切れているらしい生物“をつまんで持ち上げると観察。
軽装備で全身緑色の、醜い犬のような生き物――。
多分ゴブリンだろうと推測する俺は、立ち上がって周囲に目を向ける。
辛うじて建物の体裁を保っている砦からわらわらと出てくる、ゴブリン達。
最初のコメントを投稿しよう!