第3話 ~失敗だけどこれが本当のチート無双とも言える~

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ギャアアァ(なんだっ)!? ギャギャギャァッ(なんだあぁっ)!?」といった感じで騒いでいるゴブリン達は、俺の姿を見ると一斉に固まった。 「どーも、勇者です。じゃ、アディオス(さようなら)」  俺はそれだけ言うと、つまんでいた奴を放り投げたのち、砦の中を縦横無人に走り回った。   たまに滑り込んだりして。  たまに大きなジャンプをしたりして。  たまに逃げ回っているゴブリンを捕まえてぶん投げたりして。    要は砦の中ではしゃいだ。  ――失敗とは言えば失敗の異世界転移なのだろう。  でも、巨人というチート能力での無双はぶっちゃけ快感だった。    ▽▲▽  老女神フラーファによれば、地球に帰ることは可能らしい。  どうやら召喚するための転移ゲートを俺の住む部屋につなげて、俺がその転移ゲートをくぐってこちらの世界に来たとのことだった。  そんな記憶はないと言うと、召喚なので無意識の状態で来たのだろうとのことだった。    それと、2度目からは自分の意志で来るようにとも言われた。   もし来なければ、もう一回だけ使える『転移転生の儀』によって別の誰かを召喚することになるが、極力俺に来てほしいとも。  そなたは、今は亡きあの人の若い頃に似ている。  ああ、本当にいい男。久々に(みなぎ)ってきたぞい。  禁断の秘術でそなたを小さくして、今すぐ抱きしめてもらいたい――。  ……おえ。  俺は(かぶり)を振って、意識を老女神から眼前の崖へと向ける。  俺の頭ほどの高さである岩壁。  でもドワフリア人から見れば、高く屹立(きつりつ)する絶崖(ぜつがい)。  そこに大人が1人通れるほどの大きな虹色の空間――転移ゲートが形成されていた。    俺は一度大きく深呼吸すると一歩踏み出す。  すると、脳裏に浮かぶカルロッテの声。  絶対に帰って来るんだぞ。魔王軍はまだまだいるのだからな。誰もがかなめを勇者として認め称賛した今、かなめは戻ってくる義務があるのだ――。  カルロッテ、か……。  若干高姿勢なところが気になるけど、見た目は悪くないよな。 「おい、何考えてんだ俺。あいつは小人だぞ。さ、さあ、水と飯とフカフカのベッドが待ってるぞ」  そして俺は転移ゲートへと入る。     地球に戻りたい理由ってほかに何かあったかな、と考えながら――。
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