第4話 ~きっかけは思わぬところからやってくるようで~

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第4話 ~きっかけは思わぬところからやってくるようで~

「クローゼットかよ。……まあ、無難な場所か」  俺は転移ゲート化していたクローゼットの扉を閉めると、自分の部屋に目を向ける。  どうってことはない、いつもの殺風景で見慣れた光景。  だけど今は、俺に安穏を与えてくれる唯一の場所。  途端に緊張の糸が切れた俺は、急激にせり上がってくるある渇望――つまり水分補給と飢えを満たすために1階へと足を向ける。  時刻は午後2時。  両親は仕事、そして妹も学校ということで家の中はひっそりとしていた。  リビングに降りた俺はミネラルウォーターをがぶ飲みしたのち、ジャムを塗った食パン6枚で胃を満たす。食パンはそれでなくなった。  後で、「私の食パンないじゃんっ。お兄ちゃんが全部食べたんでしょっ!?」と妹が押しかけてくるかもしれない。  洗面台で歯を磨いてシャワーを浴びた俺は、すぐに2階へと戻る。  慣れない異世界でのあれやこれやで疲れた俺は、一刻も早くレム&ノンレム睡眠の海へとダイブしたかった。  ベッドへと横になる俺。  そこで頭に浮かぶのは、やはり異世界『ドワフリア』のことだった。    望んでいた異世界に召喚されたものの、まさかのスモールワールド。  最初こそ失敗かと思ったが、巨人モードでの無双はとんでもなく爽快で快感だった。  それに知り合った王女は小さいながらも可愛くて――、  ――って、だから何考えてるんだっての、俺は。  …………あれ?  一瞬、既視感(デジャビュ)(よぎ)る。  今日、初めて会ったはずのカルロッテなのに過去に出会ったことがあるような、そんな……。
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