第1章

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 外は嫌になるぐらいの土砂降りだ。雨のせいで視界が悪い。今は、沙耶自身の視界がぼやけている為、余計に外の景色が歪んで見える。 窓から目線を外す。 ゴロゴロ……ドーン! 突然の大音量に身がすくむ。どうやら、近くに雷が落ちたようだ。窓から、一瞬白い光が入り込んだ。光は暗くなっていた室内を一気に照らし出した。 すぐに、室内はまた真っ暗になったが、照らし出された光景が眼に焼き付いて離れない。 白い壁紙に飛び散った血飛沫。テーブルの上に乗っている、包丁とのこぎり。両方に、真新しい血がびっしりとついている。まだ、血が乾ききっていない為、テーブルから血が、雫のように滴り落ちている。 雷の音により、意識が鮮明になる。視界も開けてきた。鼻腔に鉄に似た匂いが充満する。 あまりの匂いにむせ返りそうになり、両手を 鼻に当てようとする。  両手は血で真っ赤に染まっていた。 痛みはどこからも感じていない為、自分の血では無い事は明らかである。赤黒く染まった手を見つめながら、今日の朝の事を思い出す。 今日は、数年ぶりに会う友人と室内でお互いの彼氏について、愚痴を言い合っていた。 その時、友人がふと、うなだれる素振りを見せた後、実は今まで沙耶の彼氏に好意を抱いていた事、先週告白して、了承を得られた事まで聞いた。 衝撃的だった。裏切られた。その思いが脳内を支配する前に、目の前には包丁で滅多刺しになり、息絶えた友人がいた。 激しく動揺した。殺した。殺してしまった。 お昼には他の友人とランチがあるのに。どうしよう。そんな事を不安に感じながら、ひとまず遺体をシャワー室に運び入れた。自身にかかっていた返り血を拭う事も忘れていない。 何食わぬ顔で外出。ランチの後は、すぐに帰宅し、帰り際に購入しておいたのこぎりで遺体を切断。非常に根気の必要な作業であった。 作業を終えた後、冷蔵庫に遺体を詰め込み、開けられないように頑丈なビニール紐で縛った。その後は、疲れが募り、ベッドに横になった。 全てを思い出した沙耶は、今も窓に打ち付ける雨音に身を委ねながら、これからどうしようかと思案に更けていった。 どうせなら、雨が排水溝に流されていくかのように、私のこの行いも、全部流れていけばいいのにと、言葉にならない声を上げながら、立ち上がる事も出来ず、途方に暮れた。
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