第1章

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横になる前に、予めセットしておいた、スマートフォンのアラームが室内に響き渡る。 沙耶はまだ、完全に目が開いていない状態であった。手探りでアラームをスヌーズに切り替える。もう少しだけ寝ていたい。まどろみの中で、ずっとそう考え続けていた。 五分後 ピピピ…… 再度、同じ音量、同じリズムでアラームが鳴り響く。流石に起きなければ。そう思い立ち、まだ眠気の残る身体を、ベッドから引き?がすかのように、上半身だけ起こした。 上半身を起こす事は出来たが、なかなかベッドから抜け出す気力が湧かない。まるで、ベッドそのものに下半身だけ縛り付けられているような感覚だ。吐き気は無いが、頭痛がまだ治まらない。 「嘘でしょ。もういい加減にしてよ」 頭痛が激しくなる度に、湧き上がってくる苛立ちを何とかして抑えないといけない。これでは、明日からの仕事にまで、支障をきたす事は誰が見ても想像に容易い。 (どうしようかな…そうだ!) 窓に打ち付けている雨粒の音にさえも、苛立ちを感じながら、脳内で閃く。冷蔵庫に先週買っておいたビールがあるはずだ。それを飲めば、少しはこの頭痛から解放されるかもしれない。 ベッドから抜け出し、冷蔵庫へと向かう。 しかし、冷蔵庫が開かない。開けれない。 「あれ?どうして?」 引っ越しの際に、中古で安く買ったせいかと考えながら、何度も取っ手に手をかけて、力の限り思いっ切り引っ張る。 びくともしない。 「えーーー!」 頭痛と苛立ちでごちゃ混ぜになる脳内を、頭をかきむしる事で何とか誤魔化す。諦めるしかない。明日にでも、業者に来てもらうべきかと考え込む。 「ビールが駄目なら、シャワーかな」 シャワーでも浴びて、汗ばんでいる身体を洗い流せたら、さぞ気持ちが良いだろう。そう思い付くが、冷蔵庫の前から、なかなか離れる事が出来ない。 何故か、シャワー室へと足を向ける事が出来ないでいる。理由は分からない。だんだんと視界までぼやけてきた。 アルコールを摂取していない筈なのにと疑問を浮かべながら、ふらつく足取りで室内の窓際へと身を寄せ、床に座り込む。 パタパタパタ… 雨音が消えない。まだ雨は止みそうにも無い。今、どの位雨が降っているのか気になり、 何気無く窓の向こうへと視線を移した。
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