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ささめく庭
耳を閉ざし、ただ待ち続ける。
ずっと。ずっと。
また会える、その時まで。
うす明るい、小雨模様の空に唐突にさした影に、思わず見あげるように振り向く。
「やっと、こっち向いてくれた」
やけに嬉しそうに、安心したように、ひょろっこい感じの青年が微笑む。
影の正体は彼の差し出した傘だったようだ。
「毎日、ここに立ってますよね?」
二十歳そこそこ、といった感じだろうか。
整った顔立ちに、高い身長。物腰も柔らかくて……出来すぎていて、胡散臭くなりかねないぎりぎりのところだけれど、まぁ、女の子にはもてそうだ。
私の好みのタイプじゃないけど。
「何か、用ですか?」
ナンパ? などと思うほど自惚れていない。
だからこそ不審で、言葉に棘がこもる。
青年は気にした様子もなく、それでも微笑を静かなものに変える。
「何かを……誰を待ってるんですか?」
何もかも見透かしたような言葉。
無視しても良かったのだけれど、それにはちょっと飽きていた。
ただひとり、居続けるのが淋しくなったのかもしれない。
「私、ここで結婚式をする予定だったの」
アーチ状の門扉の向こうの白いチャペルを見る。
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