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とりあえず、まだ熱を出した状態で辛そうな維網を再びベッドに運んで寝かせる。
「はぁ…はぁ……」
息が荒い。維網の額に俺は手を乗せる。
「熱っ…」
凄く熱くて、今にも溶けてしまいそうだ。さっきまで維網にのせていた、水で冷やしたタオルは既に温まっていた。俺は水を変えに部屋を出る。冷たい水を洗面器に入れ、再び部屋に戻る。そして維網のおでこに、濡らしたタオルをのせる。早く治って欲しい…そんな思いを抱えたまま、俺は部屋を出る。すると、家のチャイムがピンポーンと鳴った。何だかとても胸騒ぎがした。重い足取りで玄関のドアを開けると、どこかで見た事のある人がいた。
「えっ…と…どちら様でしょうか?」
「維網国彦だ。梓の父親ですが」
「……っ!」
維網のお父さん…!?まさか本当に来るとは思っていなかった!
「先生方に、あなたのお宅にお邪魔しているのかしっかり吐かせてここに来ました。」
こんな事を言われたら誤魔化す事が出来ない…仕方なく俺は諦めた。
「ところで、早く息子を返してくれませんか?あいつには、きっちり説教をしないとならないんですよ。」
「あの、なぜそこまでして維網……梓君を怒るんですか?彼が人一倍努力しているのは、教師である俺も他の先生方も分かります。成績は優秀ですし、運動神経も良くて、真面目で冷静な判断が出来て…先生方からも周りからも信頼されている将来有望な生徒の1人ですよ。なのになぜ…あなたが彼に求めている事は何なんですか?」
「あいつの成績が例え学年トップだとしても、私は満点を求めているんです。維網家に生まれてきた人間は全て完璧でないとならない。あいつはまだそれが出来ていない。だからもっともっと学力をつけて維網の名を汚す事のないようにしないとならない。」
「誰でも完璧になんて出来ないですよ。人間誰でも失敗はしますし、失敗しない完璧超人なんてそうそういませんよ。今回、梓君が熱を出したのも疲労と睡眠不足が原因の免疫力低下だと思います。彼は、周りの人からと助けなど貰わずに1人で頑張っているんですよ?そこは親であるあなたが分かってあげないといけないはずです。自分の息子を道具のように扱うのはやめてください。」
「さっきから聞いていれば、随分言いたい放題言うじゃないか。赤の他人が勝手に口出しなどするな!」
そう言われ、気づいた時には…頬を思いっきり殴られていた。
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