第4章 特別

2/7
前へ
/64ページ
次へ
「大丈夫か?何か…あったのか……?」 心配そうに先生は俺の顔を見つめる。こんな事言って先生を困らせていいのだろうか?俺は、無理矢理笑顔を作る。 「大丈夫です!さっきは、なぜか泣いてしまってすみません。もう平気です!」 「どこが平気なんだよ。」 「え…?」 「無理して笑わなくていいから。顔ひきつってるし、隠そうとしてもバレバレだよ。」 「…でも……」 「それに…まだ泣いてる……」 「……っ!」 まだ涙が出ていることに気づかなかった。もう…やだ……。 「梓……」 「え…?」 突然、名前で呼ばれて驚いた。 「ゆっくりでいいから…何があったのか教えてくれないか?」 「………はい。」 俺は、父さんの死について先生に話した。話している最中も、涙が止まらなかった。 「俺…家族を失いました……母さんは、元々俺を産んでからすぐに他界したし父さんもいなくなって…これから1人で…生活していけるか分からないです。こんな事なら、父さんと一緒にあの世に行きたかった……」 そう言い切ると、ずっと黙って聞いていた先生が発言する。 「梓…気持ちは分かるけど、死ぬという選択は駄目だよ。梓の場合、これからの未来があるんだから。」 「そう…ですけど……でも…」 「だったらさ、俺と一緒に暮らそう。」 「……え?」 「親御さんがいなくなって一人暮らしさせるのも気の毒だし、それにこれ以上…梓が悲しんでる姿を見たくないから…傍で守っていたいんだ。…どうかな?」 「でも…先生の生活に…俺がいたら負担がかかるんじゃ……」 「負担なんてかかんねぇよ。お前がいてくれたら尚更、そうは思わない。」 先生の顔を見ると、嘘をついていない顔に見えた。あぁ…俺は誰かに…甘えてもいいのかな?俺は素直に、先生の言葉に甘えることにした。 「あの…沢山迷惑かけると思いますが…これから、よろしくお願いします。」 「迷惑なんてかけていいからね。こちらこそよろしく。」 こうして、俺と城崎先生の同棲生活が始まった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加