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「大丈夫か?何か…あったのか……?」
心配そうに先生は俺の顔を見つめる。こんな事言って先生を困らせていいのだろうか?俺は、無理矢理笑顔を作る。
「大丈夫です!さっきは、なぜか泣いてしまってすみません。もう平気です!」
「どこが平気なんだよ。」
「え…?」
「無理して笑わなくていいから。顔ひきつってるし、隠そうとしてもバレバレだよ。」
「…でも……」
「それに…まだ泣いてる……」
「……っ!」
まだ涙が出ていることに気づかなかった。もう…やだ……。
「梓……」
「え…?」
突然、名前で呼ばれて驚いた。
「ゆっくりでいいから…何があったのか教えてくれないか?」
「………はい。」
俺は、父さんの死について先生に話した。話している最中も、涙が止まらなかった。
「俺…家族を失いました……母さんは、元々俺を産んでからすぐに他界したし父さんもいなくなって…これから1人で…生活していけるか分からないです。こんな事なら、父さんと一緒にあの世に行きたかった……」
そう言い切ると、ずっと黙って聞いていた先生が発言する。
「梓…気持ちは分かるけど、死ぬという選択は駄目だよ。梓の場合、これからの未来があるんだから。」
「そう…ですけど……でも…」
「だったらさ、俺と一緒に暮らそう。」
「……え?」
「親御さんがいなくなって一人暮らしさせるのも気の毒だし、それにこれ以上…梓が悲しんでる姿を見たくないから…傍で守っていたいんだ。…どうかな?」
「でも…先生の生活に…俺がいたら負担がかかるんじゃ……」
「負担なんてかかんねぇよ。お前がいてくれたら尚更、そうは思わない。」
先生の顔を見ると、嘘をついていない顔に見えた。あぁ…俺は誰かに…甘えてもいいのかな?俺は素直に、先生の言葉に甘えることにした。
「あの…沢山迷惑かけると思いますが…これから、よろしくお願いします。」
「迷惑なんてかけていいからね。こちらこそよろしく。」
こうして、俺と城崎先生の同棲生活が始まった。
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