第4章 特別

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貴史side 「ん…んん……」 朝、目覚まし時計の音で目を覚ます。音を止めて、時間を見ると6時。朝飯、作らないとな……。ベッドから起き上がって台所に行くと梓が何かを作っていた。 「…梓……?」 「あっ、城崎先生!?おはようございます!」 「おはよう…何してるの?」 「えっと…あの…これからお世話になるから、せめて昨日のお礼を……と思い…」 形がバラバラの野菜に焦げて真っ黒の肉、そして何より…梓の手には、絆創膏だらけ…。 「梓…もしかして料理は慣れてない?」 「…はい……全然です…。野菜は形が崩れるし、ベーコンは焦がして真っ黒にしてしまうし……すみません。」 「謝らなくていいよ。これから慣れていけばいいから。今日は日曜日だし、練習する時間は結構ある。一緒にやろう。そしたら怖くないよ。」 「…はい、ありがとうございます!」 そして、朝食作りの練習を始めた。 「左手は猫の手な?こう丸めて切っていく。そうしないと、怪我しやすくなるから。」 「なるほど……。猫…」 そう言って、梓が手を丸めてこうかな?と1人で呟いている姿に、不覚にもキュンと来た。 「やってみるか?」 「はい!」 俺は包丁を渡し、野菜を切らせる。手は丸まっていて、さっきよりもすんなり切れている。 「このまま、野菜とか切っててもらっていいか?ちょっと、卵切らしてて買いに行きたいんだけど…」 「大丈夫です!野菜切って待ってますね!」 「包丁…気をつけてな。」 「はい!」 俺は、家を出て卵の買い出しに行く。本当に、何もないといいんだけど……。スーパーに行くと、周りの人達の噂が耳に入った。 「聞いた?維網家…あの維網国彦が死んだって…」 「マジ?終わったな。」 「でも息子さんいなかった?お母さんは昔に他界したみたいだし、お父さんだっていなくなって……」 「お父さんの教育厳しかったらしいし、あの子にとっては都合良かったんじゃない?」 「そのうち自殺したりとか…」 「やっだぁー、そんな暗い話したら駄目よー」 そんなことを笑いながら話し合う女性達。あいつの気持ちも分からないくせに、勝手な事言ってんじゃねぇよ。気持ちを抑えながら、卵を買ってスーパーを出た。 「ただいま……梓?」 家が妙に静かだった。まさか……。嫌な予感がして台所に向かう。 「梓っ………っ!?」 台所に着くと、手が血まみれでぐったりした梓が倒れていた。
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