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救急車を呼んで、城崎先生は病院に運ばれた。俺は、付き添いとしてついて行った。そして、医師に診断してもらった。
「うん…どうやって体の中に入れたのかは分からないが、麻痺の原因となってる薬が体内にあるね。」
「そんな……」
「でも、明日には効果が切れるから安心しなさい。」
「……はい。」
診断室を出て、教えてもらった病室に行く。ノックしてドアを開けると、城崎先生がいた。
「梓……」
城崎先生はまだ、ベッドに横になっていて動ける様子ではなかった。
「城崎先生…大丈夫ですか……?」
「……ん…大丈…夫……。」
ゆっくり気味だが、何とか話せてる。…よかった……。
「…梓……あり…がとな……警察…呼んでくれ…て……お前が…呼んでくれ…なかったら……殺され…てたかも…しれない……。」
「城崎先生を助ける為なら当然ですよ。……でも、すみません。結局、助けられたとしても…こんなことにさせてしまって……」
自分の不甲斐なさに泣きそうになってくる。
「何…言ってんだよ……それでも…助けて…くれたこと…には……変わりない…んだからよ……。」
「でも俺はっ…もっと早くに助けたかったんです!」
また…俺は泣き出した。男のくせに…何度も泣くなんてかっこ悪い…。
「…何……で…?」
「城崎先生のことが…大切で、大好きで、特別な存在の人だからっ……!!だから、何の怪我もさせずに守りたかった…!辛い思いをさせたくなかった…!!」
俺はまた泣き崩れた。城崎先生のまだ動かせない手を優しくとって握りながら、俺は号泣した。
「あず…さ……泣く…な……目、腫れる…ぞ……?」
「いいんです…腫れたって、どうもしませんし……」
そう言って、俺は城崎先生の手の甲に軽くキスをする。
「……梓…顔……近づけて…?」
「え…なぜですか……?」
「いい…から……」
「は、はい……」
俺は言われるまま、城崎先生に顔を近づける。すると、城崎先生が俺の唇にキスをした。
「んっ……」
「俺も…お前のことを…誰より…も…特別だっ…て…思ってる……。だから…あの時……あいつ…が……寝室に…近づかないように…嘘ついて……お前を…守ろうと…した…でも…結局……駄目…だったけ…ど…」
「……っ!」
城崎先生の優しさに、涙が止まらない。
「ありがとうございます…城崎先生……」
そして、俺達はそのまま…病室で一夜を過した。
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