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あの子が持っている物が欲しい。あの子のような生活がしたい。そんな思いを抱えたまま、俺は17年間生きてきた。維網梓、17歳、高校3年生、俺は産まれてから自由というものを知らない。何故なら俺の家が、そういう事を許さないから…。俺は大人になるまで自由を知らないで生きていくんだなと、そう思っていた。
ある日、学校で周りの女子達が騒いでいた。
「やばくない!?あんなにイケメンな先生見たの初めて!!」
「本当!かっこいよかった?」
どうやら、俺達の学校に新しい先生が来たみたいだ。女子達が噂するほどのイケメンな先生らしい。そんな事はどうでもいいと思いながら、先生に頼まれていた課題提出のワークを全員分持って職員室に向かう。
「失礼します。橘先生、これ提出課題です。」
「おー、いつもありがとうな維網。助かるよ。あ、そうだ。もう1つ頼みたい事があるんだが…」
先生は申し訳なさそうに言葉を濁す。
「俺でよければ引き受けますよ。」
「ありがとう、本当に助かるよ。実は、新しく来た先生がいるから学校案内を頼みたいんだが…」
先程女子達が噂していた内容を思い出す。確か凄くイケメンな先生だったような……
「橘先生、学校案内をこの子がしてくれるんですか?」
「あぁ、そうだ。挨拶してくれ。」
「初めまして、城崎貴史です。よろしくね、維網君。」
城崎先生は、優しい笑顔を見せる。噂通りのイケメンだ…女子が騒ぐのも分かるような気がした。
「維網梓です。こちらこそ、よろしくお願いします。」
俺が挨拶をした後に橘先生が続ける。
「維網君は、成績優秀で真面目でしっかりしていてとても信頼出来る生徒なんだよ。」
「へー、そうなんですか。とても頼もしい生徒さんなんですね。」
「あ、あの…いつ案内をしたらいいですか?」
「すまない、忘れていた。昼休みで昼食をとった後で構わない。よろしく頼むよ、維網君。」
いつものようにニコッと微笑む橘先生。
「…はい。」
これが、俺と城崎先生との出会いだった。
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