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その後も、俺の事情聴取は終わらなかった。まだ警察は、俺が誘拐犯だと疑っている。それに……
「ですから、俺は誘拐などしていないと何日も前から言ってます。」
「本当にやった人でも、何もしていないって言う人が多いから信用なんて出来ないよ。それと、被害者ぶるのはやめなさい。あなたは大人でしょう。そんな子どもみたいに被害者ぶる態度はどうかと思うけどね。」
この警察の人…真面目にやっている感じにはとても見えない。俺に目を合わさないし、ガムを食べながら聴取してるし、机に足かけてるこいつの方がよっぽど子どもだ。とても警察の人がとる態度ではない。
「前にも言いましたよね?本人の許可はとって生活しているって。」
「んー…じゃあ、梓君をここに連れてきてよ。それなら話は早いだろ?」
「……え…」
梓を…ここに連れてくる?そんなのは嫌だ……。
「…すみません。うちの学校、期末考査2週間前に入っていて勉強頑張っているから…今は無理です。」
「連れてこれない?だったら、もうあなたを逮捕するしかないね。」
「……っ!」
逮捕…そんな早くにされるなんて……とても気が重くなった。
「どうします?早く梓君を連れてこないと、もうあなたを逮捕するしかなくなりますが?」
「……」
どちらが正しいのか分からなかった。一体どうすればいいんだろう……。俺の頭はぐるぐる回って、思考がごっちゃになった。
「…とりあえず、次に来た時には逮捕か本人を連れて来るか、どちらかですよ?今回は、まぁ…もう一度だけチャンスを与えるって形で…。梓君の学校の試験が終わってから来てください。」
「……はい。」
やっと終わって、署を出て時間を確認すると9時を過ぎていた。家に着くと、梓が出迎えてくれた。
「おかえりなさい、残業お疲れ様です。」
今日は残業で遅くなると伝えてあった。
「ただいま、ありがとな。」
リビングに向かおうとしたら、梓に呼び止められた。
「城崎先生…」
「ん?どうした?」
「先生…具合悪いんですか?先週からずっと顔色が悪いから…」
「え…?」
体は何ともないとは思うけど…でも、最近事情聴取ばかりだからなのか、少しだるい気もする。
「大丈夫だよ、体の調子はいつも通りだから。心配してくれてありがとな。」
「そうですか…それならいいんですけど……」
そして、2週間後。梓達は、期末考査が始まった。
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