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「城崎先生……」
あの時…やっぱり無理してたんじゃ……。そう思っていると、城崎先生が目を覚まして上体を起こす。
「ん……」
「あ、城崎先生。大丈夫ですか?」
「……」
城崎先生は黙り込んだままだ。やっぱりまだ具合が悪いんだろうか?
「城崎先生…?本当に大丈夫…ですか?まだ、具合悪いなら……」
そう言いかけた時、城崎先生に腕を強く引っ張られ抱きしめられた。
「……っ!?」
驚きと恥ずかしさでいっぱいになった。どうしたらいいのかも分からず、そのままでいると城崎先生が話し始めた。
「……わりぃ…少しだけ、このままでいさせて……」
「そ、それはいいですけど…一体、どうしたんですか…?」
城崎先生は、何も言わなかった。ただ、体が凄く震えていて…聞こうにも聞きずらい雰囲気だったのでそのまま抱き締め返し、背中をさすった。こんな怯えているような…怖がっているような先生は初めて見た。しばらく背中をさすっていると城崎先生が動いた。
「もう、いい…大丈夫……ありがとう。」
「あ…あのっ!」
「……何?」
「最近…何かあったんですか?とても辛そうですよ?」
「だから、大丈夫だって……」
「大丈夫じゃないから言っているんです!!」
俺は先生の腕を強く掴んだ。正直、自分でこんなに強く発言出来ているのが意外だった。城崎先生もかなり驚いてる。俺はゆっくり、城崎先生の腕を離した。
「す…すみません……俺…つい……」
「いや…俺こそ、ごめん……心配してくれてるのに冷たい態度とって…」
それから、少し沈黙が訪れる。何か言った方がいいのかな?でも、何か言いにくい雰囲気だし…どうしよう……。すると城崎先生が先に口を開いた。
「梓…お前に伝えたい事があるんだけど…聞いてくれるか?」
「も、勿論です!何でしょうか?」
「実は……」
俺は、その時初めて知った事ばかりだった。父さんが死んでから俺が行方不明扱いされていた事、城崎先生が会議があるなど嘘をついて事情聴取に行っていた事……と、今まで先生にあった事を聞いた。何が何なのか、よく理解出来なかった。でも、俺のせいで城崎先生に迷惑をかけたことだけは理解出来た。もう、城崎先生に迷惑をかけたくない…これ以上苦しめさせたくない。意を決して、俺は城崎先生に言った。
「城崎先生…俺行ってきます。」
「ど、どこに?」
「警察署に決まってるじゃないですか。」
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